妄想!ワーキングメモリが苦手!自分をくすぐってもくすぐったいのは統合失調症の可能性
精神疾患を語る上で、代表的な例で挙げられることが多い統合失調症ですが、注意力や集中力の低下、意欲や感情が乏しくなるなどは、他の精神疾患でも見られる症状です。
しかし、妄想・幻覚や自分をくすぐってもくすぐったいなどといった症状がある場合、統合失調症の可能性が高いです。
今回は統合失調症の特徴や、さまざまな研究結果についてお話していきます。
統合失調症の特徴
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陽性症状
- 妄想
- 幻覚
- 思考障害
陰性症状
- 感情の平板化
- 思考の貧困
- 意欲の欠如
- 自閉(社会的引きこもり)
認知機能障害
- 記憶力の低下
- 注意・集中力の低下
- 判断力の低下
具体例)
- 奇異な行動
- とりとめのない支離滅裂な会話
- 相手の話のポイントや考えがつかめない
- 作業のミスが多い
- 行動の能率が悪い
- 相手の気持ちに気づかない、または誤解する
- 物事に適切な感情がわきにくいが、不安や緊張が強く慣れにくい
- 独り言が多い
など
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統合失調症の原因
大脳皮質は知覚・記憶・言語・判断・認知などの高度な精神活動を担当しています。 大脳辺縁系は情動や本能などの働きに重要な部位です。 統合失調症では大脳皮質や大脳辺縁系あるいは視床などの機能が、様々なかたちで障害されているのではないかと考えられています。
統合失調症の症状を示すモデルマウスを用いて、海馬[1]における記憶を担う脳内ネットワークに異常があることを発見しました。この脳内ネットワークの異常は、ヒトの統合失調症などの複雑な精神疾患の症状を起こす一因となっている可能性があります。
理化学研究所の研究では、大脳辺縁系の一部である”海馬”の情報処理異常が複雑な統合失調症の症状の一因だとしています。
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統合失調症>大うつ病>強迫症の順で、ワーキングメモリ(作業記憶)が苦手
出典:複数の精神疾患における記憶力を共通のモデルで予測することに成功―疾患に共通する認知機能低下のメカニズム解明に大きく前進―
精神疾患患者は健常者に比べてワーキングメモリ(作業記憶)が低下していることは知られており、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報通信総合研究所が発表した研究では、統合失調症患者のワーキングメモリ低下の個人差を予測するだけでなく、統合失調症、大うつ病、強迫症、自閉スペクトラム症の4つの精神疾患における集団レベルの作業記憶力を予測しうることを明らかにしました。
研究グループが行った過去の研究では、健常被験者(17名、女性6人、19~24歳)が安静にしているときの脳活動を5分間撮り、脳の各領域の間の時間変動の相関を計算することで機能的な繋がり(結合性)を推定しました(図1)。これとは別に、文字の羅列を覚え、3つ前に表示された文字と同じかどうかを判定する作業記憶トレーニングを1時間ほど行なってもらい、その学習曲線から成績上限を推定しました(図1)。こうして得られた被験者個人の脳の繋がり方のパターンと作業記憶トレーニングの訓練成績を使って、被験者個人の脳領域の繋がり方のパターンから作業記憶能力を定量的に予測するアルゴリズムを開発しました。
今回の研究ではこのアルゴリズムを使い、京都大学、広島大学、京都府立医科大学、昭和大学、東京大学でそれぞれ収集された4つの精神疾患患者(統合失調症[58名、平均37.9歳]、大うつ病[77名、平均41.6歳]、強迫症[46名、平均32.8歳]、自閉スペクトラム症[69名、平均31.3歳])と、その年齢と性別を統制した健常者(各々[60名、平均35.2歳]、[63名、平均39.3歳]、[47名、平均30.3歳]、[71名、平均33.5歳])に適用して、疾患ごとの作業記憶の低下幅を予測しました。その結果、統合失調症、大うつ病、強迫症の順で低下幅が大きく、自閉スペクトラム症では健常(定型発達)者と同等であることを予測しました(図4A)。
そして、この結果は過去の研究結果と一致したのです。
研究チームは、作業記憶力の低下など、疾患横断的な症状の背景に、どのような脳領域間の繋がり方のパターンがあるかを調べる方法として有効と考えられます。このような研究が進むことで、患者さんにとって深刻な症状を改善する治療方法に繋がると期待されます。
と述べています。出典:複数の精神疾患における記憶力を共通のモデルで予測することに成功―疾患に共通する認知機能低下のメカニズム解明に大きく前進―
『統合失調症の特徴』での記憶力の低下とワーキングメモリは同義ということです。
統合失調症の人は、自分でくすぐってもくすぐったく感じる
わたしたちは他人にくすぐられるとくすぐったいですが、自分で自分をくすぐっても、くすぐったくないのは何故だろうと思ったことはありませんか?
それは、自分のこれからの行動に関する予測(自己運動予測)ができているため、くすぐったとしてもタイミングや力加減などが分かり、刺激を受けた感覚を脳が自動的に抑制するため、くすぐったくないのです。
しかし、この予測ができない他者からのくすぐりであった場合は、くすぐったく感じるのです。
そして統合失調症患者は、刺激を受けた感覚(感覚フィードバック)、あるいは、脳が自動的に抑制する部分(比較・キャンセルアウト)に障害があることを示唆されました。
統合失調症傾向の人の脳はクリエイティブな人の脳と同様、情報を適切に排除できない
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オーストリア・グラーツ大学の神経科学者アンドレアス・フィンク氏らは、MRI(磁気共鳴断層撮影装置)を使って統合失調症傾向の患者とクリエイティブな仕事をしている人の平常時の脳と思考中の脳の画像を撮影した。
その結果、重い統合失調症傾向を患っている人と創造性豊かな人の脳内いづれも、思考中であっても注意と集中にかかわる部位とされる楔前部(けつぜんぶ)が活動を続けていたという。一般的には、複雑な課題に取り組むと、楔前部の活動が低下し、集中することを助けると考えられている。これは脳が、大量の情報を取り込む一方で、雑音となる情報を排除できないということを意味する。つまり、脳のフィルターが機能していないようなのだ。
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雑音に敏感になる様々な可能性
参考:統合失調症傾向は,自己運動ではなく他者運動の予測障害と相関する
自分と他人の行動を識別する新たな神経機構を解明
-運動中の『感覚ゲーティング』がになう新たな機能-
統合失調症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
統合失調症 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版
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