転職歴が多いなど、いまいちな経歴でも最高の人材はたくさんいる理由
会社で採用担当をしている人は、日々応募者の経歴を目にしていることでしょう。
その中である一定の指標として、一流大卒で成績優秀、完璧な履歴書に素晴らしい推薦文の数々と、非の打ちどころがないAさんの経歴書を見たとき、その人が次の内定者の最有力候補になるのではないでしょうか。
一方、二流大卒で転職が多く、レジ係や歌うウェイトレスみたいな変な職歴があるBさんの経歴書を見たとき、即刻Bさんを不合格にしていませんか?
企業で人事部長をしているというレジーナ・ハートリー氏は「どちらも適格だということを忘れないでください。」と語っています。
なぜ、ハートリー氏はいまいちな経歴のBさんも適格だとしているのでしょうか。
いまいちな経歴の人は何かの障害と戦ってきた可能性
ハートリー氏の部署では、冒頭で述べたような対象的なタイプの候補者を表す正式な名称があります。
政治的公正さを欠き、少し決めつけ過ぎに聞こえるかもしれません。
Aさんは「銀のスプーン」タイプ。
明確な優位性があり、成功を約束されているような人物です。
Bさんは「闘士」タイプ。
同じ地点に到達するために、極めて困難な条件を戦い抜いてきた人物です。
履歴書はその人物のストーリーを語ります。
ハートリー氏は長年の経験からパッチワークキルトみたいな履歴を持つ人について学んだことがあり、そういう履歴書をすぐには放り出さず立ち止まってよく検討するようになりました。
ハンパな仕事の連続は、一貫性のなさや、集中力の欠如、気まぐれさを示すかもしれませんが、一方で何かの障害と戦ってきたことを示すのかもしれません。
「銀のスプーン」に文句があるわけではありませんが、「闘士」にも少なくとも面接してみる価値があります。
難関大学に合格し、卒業するには多くの犠牲と努力が必要です。
しかし、すべて成功を前提とした人生を歩んできたとしたら、困難にどう対処するのでしょうか?
彼女が採用したある社員人は、一流大卒の自分にはふさわしくない仕事があると考えていました。
仕事のプロセス理解のために、一時的につまらない手作業をさせると、彼は辞めてしまいました。
それとは逆に、敗者の人生を運命づけられたような人が、成功を勝ち取っていたとしたらどうでしょう?
そういう「闘士」を面接するよう、彼女はすすめています。
成功者や優れたリーダーの共通点とは
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ハートリー氏は成功した実業家に会ったり、優れたリーダー達の経歴を読むうちに彼らの共通点に気付きました。
彼らの多くが、若くして苦難の時期を経験していたのです。
貧困や、親による育児放棄、子どもの頃の両親との死別、学習障害、アルコール依存症、暴力などです。
伝統的な考え方では、トラウマは後の人生に苦難をもたらすものとされ、その結果、生じる機能障害に焦点が当てられてきました。
しかし、機能障害の研究が進むと調査データから予期せぬことが明らかになりました。
最悪の状況においてさえ、人は成長し、変貌を遂げうるということです。
直感に反するこの注目すべき現象を、科学者は「心的外傷後成長」と名付けました。
リスクにさらされた子供に対し、逆境が与える影響を調査したある研究では、698人の子供の中で最も過酷な経験をした子供たちのうち3分の1以上が成人後、健康的で、成功した――生産的な人生を送っています。
あらゆる困難と非常に分の悪い条件にも関わらず、3分の1もの人が成功しているのです。
ある人物は両親から養子に出されました。
大学は中退し、職を転々とし、1年間インドに滞在しています。
その上、彼には読字障害がありました。
そんな人を採用するでしょうか?
彼の名を、スティーブ・ジョブズと言います。
世界で最も成功した起業家を調査した結果、読字障害を持つ割合が、非常に高いことが分かりました。
アメリカでは、調査対象となった起業家の35%が読字障害を持っていたのです。
驚くのは心的外傷後成長の経験者である起業家の中には、自分の学習障害は長所になっていて、「望ましい欠陥」なのだと考えている人がいることです。
なぜなら、そのおかげでいい聞き手となり、細部に注意を払うようになったからだと彼らは自分は逆境にもかかわらず成功したとは考えていません。
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早寝早起きと夜ふかしはどっちが成功者になるのか
困難はユーモアで切り抜けられる?
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今の自分があるのも逆境のおかげだと思っているのです。
彼らはトラウマや苦難を自己形成の主要な要素として受け入れるとともに、そのような経験がなければ、成功に必要な力や根性は身につかなかったかもしれないことを理解しています。
完全にコントロールできるのは自分だけという信念によって「闘士」は動かされています。
物事がうまく行かないとき、彼らは自問します。
「もっとうまくやるには、やり方をどう考えたらいいか?」
「闘士」にはある種の目的意識があって容易にはくじけません。
貧困や狂った父親や、度重なる強盗との遭遇を生き抜いてきた彼らは言うでしょう。
「仕事上の困難だって?本気で言っているの?そんなの何でもない、任せろ」
それで思い出すのはユーモア感覚です。
「闘士」は困難をユーモアで切り抜けられること、笑いが物の見え方を変えてくれることを知っています。
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「闘士」タイプを支援している企業は、業績も優れている傾向
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そして最後に、人間関係があります。
逆境に打ち勝った人は単独で成し遂げているわけではありません。
成功への道のりのどこかで、彼らは自分の長所を引き出し、自分の成功に投資してくれる人に出会っています。
どんな時でも頼りにできる人の存在が、逆境に打ち勝つためには必要なのです。
多様性とインクルーシブな実践に取り組む企業は「闘士」タイプを支援し、業績も優れている傾向があります。
多様な人材を積極的に活用しようという考え方を推進する『DiversityInc誌』の調査によれば、多様性において上位50社に入る企業は、S&P 500を利益率で25%上回るという結果が出ています。
ハートリー氏「は過小評価されている候補者を選ぶべきだと言いたい。彼らには情熱と目的意識という隠れた武器があります。「闘士」を雇いましょう。」と語っています。
ソース:最高の人材の履歴書が必ずしも理想的でない理由|TED
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次回は、理想的な経歴 VS いまいちな経歴 それぞれの人材を採用した時のメリットとデメリットを心理学的な考え方を絡めながらお届けしようと思います。