トラウマ(PTSD)の治療に期待。記憶の消去も睡眠中にされるという研究結果

トラウマ(PTSD)の治療に期待。記憶の消去も睡眠中にされるという研究結果

物事を覚える(記憶する)という行為は睡眠中にされるということは、聴いたことはあるでしょう。
しかし、物事を”忘れる”というのもレム睡眠時にされるということが分かりました。

今回は、記憶の消去も睡眠中にされるメカニズムについてご紹介します。

 

 

メラニン凝集ホルモン神経(MCH神経)が記憶に作用

メラニン凝集ホルモン神経(MCH神経)が記憶に作用出典:https://pixabay.com/images/id-2301393/

わたしたちが睡眠中に、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すことはご存知と思います。
その際に脳内でさまざまなホルモンが分泌されていますが、内分泌や自律機能の調節を行っている視床下部という脳領域にある、「メラニン凝集ホルモン神経(MCH神経)」がポイントとなります。

名古屋大学 環境医学研究所の山中章弘教授らの研究グループによれば、このMCH神経は、今までの研究から食欲調節に関わっており、食欲を増進する神経と考えられてきましたが、特定の神経の活動を操作できる光遺伝学や化学遺伝学の手法を用いてMCH神経の活動だけを活性化すると、ノンレム睡眠がレム睡眠に変換されて、レム睡眠の時間が増加することを報告しています。

 

 

レム睡眠時に活動するMCH神経が活性化すると記憶の消去がすすむ

レム睡眠時に活動するMCH神経が活性化すると記憶の消去がすすむ出典:浅い眠りで記憶が消去される仕組みを解明~なぜ夢は起きるとすぐに忘れてしまうのか~ 

同研究グループがマウスの脳を用いて実験したところ、MCH神経は活性化すると記憶が消去され、抑制すると記憶が定着されることが分かりました。
この仕組みをいかして、記憶や空間認識能力に関わる”海馬”に伸びるMCH神経の末端を活性化させると、海馬の神経の活動が抑制されるたのです。
つまり、記憶の消去がすすんだということです。

次に睡眠時や覚醒時どの場合でもこの結果が起こるのか次の3パターンを比較しました。

  1. レム睡眠中のみMCH神経活動を抑制
  2. ノンレム睡眠中のみで抑制
  3. 覚醒時のみで抑制

その結果、1.レム睡眠中のみMCH神経活動を抑制したときのみ記憶が向上し、ノンレム睡眠中や覚醒時での抑制には影響がありませんでした。

 

 

記憶の消去はトラウマ(PTSD)の治療に期待できる

記憶の消去はトラウマ(PTSD)の治療に期待できる出典:https://pixabay.com/images/id-2335939/

今回の発表では、日常生活に支障が出るようなトラウマ(PTSD)の記憶を消去するという治療には応用できるのではないかと語られています。

ソース:共同発表:浅い眠りで記憶が消去される仕組みを解明~なぜ夢は起きるとすぐに忘れてしまうのか~ 

 

 

この論文を読んで思ったのが、レム睡眠中にMCH神経の活動を自在に活発化または抑制したりして、テスト前には記憶力を向上、嫌な出来事の記憶は消去なんてすごく便利だと思いましたが、そんな手軽な使い方はできなさそうですね。
あくまで医療機関で行われる治療での用途でしょう。

あと素人が思いつく問題点として、海馬の活動を抑制するということはあまりこの技術を多用すると海馬の萎縮につながるのではないか、ということと、記憶と一緒に空間認識能力も鈍くなるのではないかと、思いました。

でもまだ発見段階ですし、たくさんある弊害や問題をつぶしてから実用化されるでしょう。

 

 

 

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